奨学金制度と大学進学

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奨学金を利用したことで破産?

「奨学金を利用したが為に、破産してしまった」そんな人の声を取り上げ、国の制度に大きな問題がある、奨学金は借りるべきではないと警報を鳴らす報道がされたことがあります。確かに、奨学金を利用していた人が破産することはあります。しかしこれは国の奨学金制度に問題があったことが原因なのでしょうか?私なりに推測してみました。

奨学金を返済できずにいる人の数

日本の主な奨学金制度である独立行政法人 日本学生支援機構では奨学金の延滞者に関する属性調査を行い、結果をHPで公開しています。 これによると、返還が滞っている人の人数、返済を行えている人数は次のような結果でした。

平成25年度 奨学金の延滞者に関する属性調査結果

平成25年度12月時点
・奨学金の返済を3ヶ月以上延滞している人 約18万7千人
・奨学金の返済を滞りなく行っている人 約309万人

つまり、奨学金の貸与者全体の約6%が返済に何らかの問題が起きていることがわかります。ではなぜ、6%の人は奨学金を延滞することになったのか? まず属性調査結果から見て取れる原因を探ります。

なぜ、6%の人は奨学金を延滞することになったのか

その1 返済義務について十分理解してなかった。

日本学生支援機構の奨学金は返済する義務がある、貸与型の奨学金です。つまり貸与型であることを十分に理解した人が申し込む必要があります。 きちんと奨学金を返済している人の90%以上は手続きを行う前から返済が必要な貸与型の奨学金ということを理解していたと回答しているのに対し、延滞者の44%は申し込み手続きを行っている最中に返済義務があることを知ったと回答しています。 つまり、延滞者の多くは事前に配布される奨学金についての説明資料でさえきちんと読んでいなかったことが分かります。

その2 卒業後の職業

奨学金をきちんと返済している人の68%は正社員です。これに対し延滞者における正社員の割合は36%となっており、30%異常の差が開いていることが分かります。またこの正社員になれなかった人の大多数は派遣社員や期間社員、無職であることがわかります。 卒業後、派遣社員として就職するしかなかった。就職することさえできず、無職になってしまった。このような理由で奨学金の返済が滞っていることが分かります。

その3 年収と延滞理由

奨学金をきちんと返済している人は「200万~300万円未満」の年収と回答した人が25%と最も割合が高いのに比べ、延滞者は「100万~200万円未満」と回答した人の割合が24%と最も高いです。延滞が始まった理由は家計の収入が減った、家計の支出が増えたから、という理由が最も多いです。 家計の収入が減ったというのは転職、もしくは仕事を辞めたということが考えられます。

3つの原因をつなげて分析してみると・・・?

少し悪意がありますが、この3つの傾向を繋げてみると、奨学金は返済する必要性があると、十分に理解しないまま申し込みを行い、大学卒業時は正社員として会社に就職することができなかった、もしくは正社員として就職できたが退職し、派遣社員になったはものの収入が減ってしまい、奨学金を滞納することになった。

さて、これは奨学金制度に問題があったから起きた問題なのでしょうか?

国の奨学金制度に問題があるのか?

テレビや新聞では奨学金の延滞者が年々増えていると報道しており、 さも国の奨学金制度が悪いと誤認してしまいそうな内容となっていますが、本当にそうでしょうか? ひと昔前では大学に進学するにはとてつもない受験競争があったが為に、学力の劣っている人は進学することができませんでした。それが現在では少子化の為、大学では空席が目立ち、お金さえ払えば誰でも大学に進学できてしまう世の中になりました。

真の原因は「誰でも大学に進学できる世の中」にあるのではないだろうか

奨学金による破産者、延滞者が増えているのは、この誰でも進学できてしまう世の中に問題があるように思えます。

昔のように意欲的に勉強に取り組み、競争に勝てるような強さを持った人でなければ、大学に進学できない世の中であればこのような問題は起こらなかったでしょう。

厳しいようですが奨学金を借りてまで大学に進学すべきでは無い人の特徴をまとめます。

奨学金を借りてまで大学に進学すべきでは無い人の特徴


その1 そもそも勉強する気がない人、目的意識が無い人

大学を卒業すれば自動的に収入の高い職業に就職できるという幻想を抱いてはいけません。大学の初任給は高卒と比べると高く設定されている企業が多いことから「大学さえ出れば良い」と考える人もいるかもしれませんが、高い給料に見合った実力、能力が伴っていなければそもそも採用されることはありません。もし、しっかりとした目的意識が無く、熱心に勉学に取り組む気がないのであれば奨学金を借りずに、高校卒業と同時に働きだすのが賢明です。

その2 偏差値50以下の大学にしか進学が望めない学力の人

人間必ずしも得手不得手があります。勉強が苦手なのであれば大学ではなく、専門学校に進み何かしらの専門技術を取得する将来を描くのはいかがでしょうか? 複数の幅広い教養を学ぶのが苦手だとしても、ひとつの技術に特化すれば習得できるものがあるはずです。

公務員、大工系、土木測量系、設備保守系、観光系、翻訳系、理容美容計、保育系などなど専門学校から進むことのできる職業の中に、何か自分に適正のある職があるかもしれません。 学力勝負で勝ち目が無いのであれば、技能で勝負しましょう。

その3 社会の厳しさを理解していない人

2015年 合計で2兆円を超える負債を抱えたまま倒産した会社は8812社となっています。 倒産してしまった会社で働いていた人は生活苦に陥り、奨学金の返済もできなくなったことでしょう。 そんな中、倒産しない会社というものがあります。

・社員一人一人の能力が高い為、同業他社と比較し生産効率、業務効率が非常に高い会社。
・優れた社員が優れた技術を開発、世代が変わってもその技術を優れた社員が受け継ぎ、今なお技術の発展を行っているが為に、その業界の先駆者となっている会社。
・日本の大企業として政治にも影響力を持っており、倒産する場合、国家に重大な影響を及ぼしてしまう会社。

もしこのような会社に就職できれば奨学金を完済し、一戸建てを購入し、3人の子供と妻と幸せな家庭を築き、老後は毎日好きな趣味に取り組むゆとりある生活を過ごすことができるでしょう。 倒産しない優良会社に就職する為、大学合格がゴールではなく、スタート地点と認識し、努力を継続する覚悟を決めた人でなければせっかくの奨学金も無駄になることでしょう。

貸与ではなく、給付奨学金にできないのか?

・奨学金はただの借金だ
・返済する必要のある貸与ではなく、給付奨学金にすべきだ。

このような主張をされる方がいますが、そもそも金銭的に給付奨学金は可能なのか簡単に計算してみましょう。
計算に使用する数値などは日本学生支援機構の公開情報を利用します。

日本学生支援機構の1年間の収入はおおよそ2兆円。 この内1.5兆円は銀行などから借入、0.5兆円は奨学金の回収による収入です。 1年間の支出の合計もおおよそ2兆円。 この内1兆円は奨学金として貸出。1兆円は銀行などへの返済に充てています。※奨学金の回収<奨学金の貸し出しとなっているのは返済免除者がいたり、滞納者がいたりする為です。この差分を国からの補助金や利息などで埋めている状況です。

給付型奨学金に必要な国家予算は1兆円

つまり結論からすると奨学金を貸与ではなく、給付にする場合、概ね1兆円程予算があれば実現可能です。

どのように1兆円の財源を確保するか

問題は財源ですが・・。増え続ける生活保護受給世帯、高騰を続ける医療費。これらを削減することができればかなりの財源が確保できるでしょう。合わせて既存の奨学金制度も改革を行う必要があります。奨学金の審査の厳格化し、本当に奨学金を給付する人として本当に相応しいのか、もっと厳しく審査しましょう。いまの日本学生支援機構の第二種奨学金なんてほぼ誰でも受給できてしまう状況にあります。この審査の厳密化により1兆円の予算を2割程度はカットできるのではと思います。これにより、大学に進学する人が減る為、大学の総数自体削減することが可能になりますね。大学が減ればその大学への補助金などもカットすることができるので、浮いたお金も奨学金の給付に充てましょう。

ここまでできるのであれば奨学金の給付は可能になるでしょうが、難しいでしょうねぇ・・・。

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